先週の報告になりますが白馬いってきたのでレポ。
反省点だらけの山行だったので真面目に詳細に書きます。
土曜日7時。いつものIMR,KBT,K,Nさんの組み合わせで第五で待ち合わせしてどこいこうかと相談。
コンディションは木曜日に雨で全山カチコチに。その上に金曜日に30cmの雪がのった状態。当初は土曜日に金山沢、日曜日に横倉山という予定でしたが、オープンバーンは雪崩がこわいね、ってことで勝手知ったる五竜遠見尾根の一瀬髪方面へ。47のベースで入山届けをだしてリフトであがります。
いつもいってるところだし軽量化でいこうよ、場合によっては二周まわそうぜ、なんて軽口たたきながら、私はなんとなくピッケルをおいていき、グループ全体ではザイルをおいて軽量化して入山。
見返り坂こえてさくさくとドロップポイントへ。ここで犬川方面におとすか平川のほうにするか迷ったのですが、まあ雪が多少ましだろうってことで平川方面へ決定。
ピットチェックも練習と雨の後の雪の層ってどうなってるのか観察してみたかったのでやろうとしたのですが、30cmしたのアイスはスノーソすらはいりません。ってことでなしに。
先行パーティがちょうどドロップ準備していたので、「お先に」といいながらノートラックいただくかなとも思ったのですが、ちょっと悪いなと思って、ひとつ奥の沢から何も考えずにドロップイン。
いまから考えるとこれが大間違いのもとでした。100mほどおりていつもの沢に合流して、尾根を乗越して急斜面をおりようとしたら・・・・いつもの斜面はまったく別物の急斜面になっていました。
想像以上にカリンコリンのアイスです。斜度は40-50度くらいでしょうか。トラバースなんかしたら一発で雪がなだれそうだし、そもそもこれエッヂが効きそうなアイスの状態じゃないです。落ちたらもうとまんねえ。
うーん・・・と思案しながら、バックサイドで腰掛けて座っていたのですがふとした拍子でエッヂがすこんとぬけて滑落する俺・・
え・・うそ・・やばいじゃん、止まらねえ・・とおもってたら5mくらい下に都合よく木が・・、あれにぶつけよう、でも直径10cmない細い木だし枯れてたら折れるかも・・大丈夫か・・折れたらまた落ちる・止まらない・・やべえ・・
と数秒でいろいろパニックになりながらかんがえつつ板をガツンとぶつける・・
想像以上の衝撃。
でも木は折れずに耐えてくれました。
よかった・・いやあ・・ほんとヤバかった・・。
でも、バックサイド状態でバランスを木の幹一点でとってる状態です。
登り返そうにもアイスなのでまったく登れる感じなし。
おそるおそるザックをおろし、アイゼンを取り出す。ここでバランス崩したら下までとまらんです。下はノール上で見えない・・崖になってたらほんとやべえなあ・・と冷や汗です。
とにかくつぼ足ではとてもじゃないけど登れない氷壁なのでアイゼンつけることに。あまりに不安定な状態でのアイゼン装着。こんなのは初めて。パーティでザイルのひとつあれば確保した上でアイゼンつけれるのですが・・アイゼン取り出してステップインのストッパーから足を抜きます。この瞬間は右足一本で直径10cm弱のしょぼい木の幹に体重預けて命あずけてる状態・・びびりまくる。でもやるしかない。
その状態で恐る恐るアイゼンを装着。足と手が震えてうまくつけられない・・。装着してるときに片方のアイゼン落としたらもう登り返せないな・・・とびくびくして、腰につけていたカラビナにかたっぽのアイゼンをそのままひっかける。カラビナつけといてよかった・・。ほんとに。必死になって左足装着。次は右足・・。力をいれるとバランスくずして滑落しそうなので、アイゼンをしっかりと締め付けられない・・何度もびびりながら・・20分くらいだろうか・・それくらいかけてアイゼン装着。
アイゼンつけてしまえば一気に落ち着く。登り返してみんなに合流。まずサーモスから暖かいお茶をだして飲む。よかった・・。。暖かい飲み物を飲むと精神が落ち着く。
さて、とはいえ、振り出しにもどっただけです。どうする?登り返す?
だましだましトラバースして樹林帯にはいっていつものルートにでてから下降しようということになり、ひとりづつトラバース。まずIMRさんがピッケル叩き込みながら微妙にトラバース。次にKさん。次にNさん。
Nさんボードで2メートルくらいいった瞬間・・滑落・・
ずるずる落ちて加速していく。ピッケル叩き込んでも止まらない・・加速していく・・。
「ああーーやべーーー、ああーー」
と声にならない声をあげて呆然と見送るしかない。
あっという間に姿が見えなくなりきわめて心配。
無線で対岸斜面にいるIMRさんを呼ぶ。
IMRさんからは姿が見えるとのこと。
50mくらいの氷壁を落ちたみたい。衝撃で板に靴はついてる状態だけど、インナーブーツだけ外れてしまったらしい・・。Nさんの無線とつなぐとなんとか無事とのこと。よかった・・。しかしながら、Nさん、途中でピッケル飛んでしまったとのこと。
自分がアイゼンつけてたのでクライムダウンしてピッケルを取りにいくことにします。でも・・俺はピッケルをおいてきてしまっている・・後悔。
スノーボードのハイバックをたてて、バイルかわりにして氷に叩き込みながら一歩づつアイゼンでクライムダウン。表面はかちんこちんですが、ハイバックくらいの鋭利さがあれば表層の氷を突破して奥の雪にささってくれます。
ボードのハイバックを叩き込む。左足をさげて2回、雪壁にアイゼンを蹴り込んで足場をつくって次に右足を2回。
もう一回、左足をさげて2回、同じ動作を右足で。最初にもどってボードのハイバックを叩き込む。この繰り返しを淡々と繰り返す。なかなか高度さがらない。落ちても下は雪だしまあ死ぬことはないと思うのだけど、やっぱり数十メートルの高さでノーロープでクライムダウンというのは自分のしょぼい経験では未体験ゾーンなのですぐにメンタル面で緊張のあまりやられてヘトヘトになる。
あと10mくらい。もうヘトヘトです。精神的につかれるとくだらないことを考えてしまいます。たとえば、もうちょいだから背中のザックを下に放り投げた方が楽かもな、とか、はては、こっかならば飛び降りても下は雪だから大丈夫だろうな・・とかです。
もちろん大丈夫な可能性もありますが、大丈夫じゃなかったときのリスクと比べれた得られるリターンが少なすぎて割にあいませんからおかしな妄想です。でも疲れてくるとそういう考えが浮かんできます。ハセツネで限界くらいまでいっちゃったときにでてくる妄想に似てる。
そうこうするうちにもう一人のスキーやのKBTさんプチ滑落・・20mくらいおちて止まる。さらにハートにチキンがはいります。そうこうするうちに、ピッケルはかなり下のほうに飛んでたみたいで、先におりていた仲間が回収したと無線はいる。
おれはいまさら斜面の途中で板をつけられるでもないし、そもそもこんな急斜面の氷壁をボードでおりれるわけもなく、ひたすらアイゼン叩き込んでクライムダウン続けるしかないです。約1時間くらいやってたでしょうか。。なんとかボトムへ。これでいったん安全地帯。いやあ、つかれた。。メンタルがボロボロな感じ。
技術と経験のある人ならば、こんな氷壁はどうってことなくさくさくいけるのでしょうけど、俺にはあまりにも荷が重すぎ。そんな中でもなんとかおりれたのは、剣岳のインディアンクーロアールを登った経験値と多少なりともクライミングしていて高度感に慣れていたことでしょうか。
そこからは勝手知ったる一瀬のメロウなツリーラン。まあまあ雪たまっていて気をつけてすべれば底尽きないです。最初からここ滑っとけばよかった・・orz..三本杉へ到着し、最後の堰堤に向けてドロップ。
たぶんアイゼン装着とクライムダウンの緊張感でメンタルが終わっていたのでしょう・・
何度もすべった斜面でなんてことないのに、最初の2ターン目で目線の先に木が目に入る。まだまだ先だけどなんかやべえな、とおもったらバランスくずして吸い寄せられるように木へ。
バキ・・すげえ音。その瞬間体がなげだされ激痛。。
必死に後続IMRさんを呼びます。ホイッスル吹く(吹いていた気がするが実際覚えてない・・パニック気味でした・・)
折れた??こんなところで・・??まじ??俺ヤバい??こんな場所ヘリコプタはいれるのか?とおもいつつ、とにかく左の太ももと、膝の内足がいたくていたくて動けない。
迅速にIMRさんがかけつけてくれて、ステップインのロックを外してくれる。その間もとにかく激痛。
「足をゆっくり動かしてみて」
とIMRさんに言われて徐々に動かしてみる。激痛だけど足は動く。
「折れてないと思うよ」
とIMRさん。IMRさんはお医者さん。ほんとにこういう時には絶大な安心感です。
痛みはひどいけど、先はまだまだ長いです。ぐずぐずしていたら日が暮れる。
もう一度いたつけて滑れそうかチェック。左足がいっちゃってるのでターンの際に過重されるけどささえる自信まったくなし。スイッチしてフェイキーで滑ればいけそうだけどgentemなのでできずw
ストックだして、ひたすらサイドスリップでストックで降下することに。
20分ほど降下していつもの平川の堰堤へ。堰堤の反対岸へ徒渉し、いつもの高台の林道ポイントへ。
ここから約5kmの平川林道のトラバース。
足もつかなあ・・・凍っていたら結構ヤバいなあ・・とおもいながら、いつもより時間かかるかもしれないので、ろくに休憩もとらずに先を急いでスタート。
幸い、平川林道はそれほどひどい状態ではなく、いつもどおりの数回のデブリ末端を乗り越えるだけで47駐車場が見える徒渉地点へ。ここまできて猛烈に寒くなりダウンジャケットを取り出して着込む。
やった・・おりてきた・・ほんとにいろいろあった・・。雪の上に大の字になってしばしほっとする。
そのまま病院へ直行。レントゲンをとり診断。
どうやら骨には異常なく、太ももに強度の打撲に伴う血腫。内足靭帯を少しいためてる状態。
当然、翌日の山はNGに。とはいえ、仮に大丈夫だったとしてもチキンはいってしまってさすがに入山しなかったように思う。つくずくチキンである。。
その一方でこんな目にあいながら、私以外のパーティは翌日は栂池裏ひよ-親沢へ。修行系だったそうです。タフだよなあ(笑)
■総括
- 行きなれた山とはいえ、ガイドなし山行である以上、最低装備は持っていくこと。
- 前々日の気象状況から山の状態を想像する力が欠けていた。どう考えてもピッケル必須だろう。
- ドロップポイントをいつもと変える場合は慎重に。また登り返すのも一つの手だったかもしれない。
- 怪我は核心部分を抜けて精神的に抜けた際にくるんだ・・と改めて実感。
- 怪我した後はいま振り返ると多少、精神的にあわてていて平常時とはちがったかもしれない。少しゆっくり休んで落ち着きを取り戻すことが重要だったかもしれない。今回は日没が恐かったので微妙な判断ではあったが。
- 前半の氷壁でのトラブルのほうが危険度でいうと圧倒的に高かったはずだが、そこはクリアし、後半の危険度の少ないツリーで怪我をする。リスクと怪我の確率は必ずしも一致しない。精神状態がテンション高く集中さえしていれば意外と大丈夫なものだけど、ちょっと弱るとすぐに怪我につながる。
- 経験値は自信になる。今回は高度面では剣岳のインディアンクーロワールを登ったこと、遊びとはいえマルチピッチでクライミングしていたこと、体力面ではハセツネで何度も完走していること、が妙な支えになっていた気がする。経験値をあげることが、精神の安定につながる。