山登りは高校時代にはじめた。
山口県には高い山なんか何にもなく、ひたすらボッカばかりやっていた記憶がある。
水平に異動する山よりも垂直に異動する岩のほうがシンプルにカッコいいと思っていたのだが、残念ながら周りにはまったくそういうことをしている人もなく、知識もまったくなく、たまにボッカトレをしていた岩山(右田ヶ岳)でちょっとした岩の塊に知人と工事用ロープでしがみついて遊んだりしていた。
いまでいうボルダリングですが、相当に滑稽だったとおもう。
周囲はそんな「水平的な山環境」だったのですが、山岳部の部室には岩と雪の古い雑誌があって、その中に衝撃を受けた表紙がありました。人がありえない角度でぶら下がってるわけです。で、いまでも写真ははっきり覚えているのだけどその中身が何かさっぱりわかってなかったのだが、この前はじめて数十年ぶり再会。
岩と雪72号でした。
写真の人はジョン・バーカー。
フリーソロの創始者的な人だそうです。
その世界では超ビッグネーム。
なんで岩と雪の72号の表紙と20年ぶり以上に再会したかというと・・ROCK AND SNOW 045で、追悼特集をしていたから・・
そう。追悼です。
死んでしまったそうです。
追悼特集の記事がいろいろと深い内容でした。
彼がフリーソロという極限のスタイルにいったきっかけはあるパートナーから
「もし君がこのルート(5.8のクラック)をトップロープで100回やったとして何回くらい落ちるのか?」と問われて
「ゼロ回だ」。
と答えたところからはじまったそうです。
つまり、ゼロ回ならばロープなしで登れるじゃんと。
とはいえ理論上はそうですが、ほんとにロープなしで登るというのはおそるべきことです。そしてその限界値を何十年も飽きもせずにあげつづけていたというのはすさまじいことです。
幅50センチの板の上を歩くのは誰でもできますし100回やっても1回も板を踏み外しませんが、これが高さ100メートルの二つのビルの間に渡された板の上だと歩けません。漫画の「カイジ」でそういうシーンありましたね。
能力的には可能なのに、能力より先にメンタルに限界がきてしまって「やれない」。
ここまで極論ではなくても仕事や生活習慣といったささいなことでも「やればできるのに・・病」はありがちです。
それを仕方ないよねと思うか、仕方なくなんかなくて克服ようとするのか?そこに二種類の選択肢があるように思います。
ちょっぴり我がことのようにいろいろ考えさせられる特集記事でした。